精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
第34条に関わる相談業務の手引き ―案―
この手引きは,保健所,地域保健センター,保健相談所等で「精神保健及び精神障害者福祉に関する法律」(以下「精神保健福祉法」という。)及び「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」(以下「運営要領」という。)に基づく地域精神保健福祉活動を行うに当たっての手順等の参考とするべく、精神保健福祉法及び運営要領のないように沿って東京都衛生局精神保健福祉課がまとめたものです。


1 相  談



(1)相談受付

地域での精神保健福祉を担う保健所活動における地域ケア相談として広く対応する。
相談窓口:保健所又は特別区地域保健センター等の地域精神保健担当部署
(以下「保健所等」という。)とする。
相談者は、限定しない(従来の47条に基づく活動)
来所により受け付ける
※各保健所等における従来の相談手続きによる
※1 直に34条としての相談があった場合でも、34条に係る事業の説明を十分に行い、従来の相談手続きによる対応をする
※2 夜間については、保健医療情報センター(ひまわり)での相談により、保健所の地域精神保健福祉活動での対応が必要と考えられる場合に保健所等を紹介する
(2)相談内容及び状況の確認

1 相談の趣旨
相談者自身に関する内容
家族に関する内容
近隣住民に関する内容    など

相 談 者

※ 限定しない
確  認  事  項

 相談の趣旨(動機)、 氏名、 住所、 電話番号、 生年月日 (年齢)、 性別、 対象者との続柄(関係)、  相談の具体的内容、 家族等のこれまでの対応とそれに対する本人の対応、10 訪問の希望(意向)など


2 相談対象者の状況

ア 家庭(地域)での状況   イ 医療との関わり   ウ 精神症状の有無  等

相談対象者

精神障害者又は
その疑いのある者
確  認  事  項
 氏名、 住所、 電話番号、 生年月日、 性別、 家族と同居か単身生活か、 家族構成、 家族歴(家族事情)、 最終学歴、10 婚歴、11 職歴、12 犯歴、13 キーパーソン、14 保護者の選任審判の有無及び選任年月日、15 入院・通院歴(医療機関名(主治医名)、期間、病名、入院形態等)、16 現病歴(病状の概要、推定発病年月日、発病当時の症状等)、17 身体的既往歴  など

※ 確定事項は、確認できる範囲で可




2 訪 問 相 談



  本人の状況、家庭環境、社会環境等の実情を把握し、これらに適応した相談助言を行う。
訪問相談は、原則として本人、家族に対する十分な説明と同意の下に行うが、危機介入的な訪問など所長等が必要と認めた場合にも行うことができる。
  医療の継続又は受診についての相談援助や勧奨のほか、生活相談、職業に関する相談等の社会復帰援助や生活支援、家庭内暴力やいわゆるひきこもりの相談その他の家族がかかえる問題等についての相談助言行う。


(1) 相談内容及び状況の確認に基づき、訪問要否及び訪問体制の検討

<地域精神保健担当者、係長、課長等>

訪問の日時
訪問担当職員
相談者(保護者等)との連絡  *場合によっては、相談対象者
関係機関との連絡(福祉事務所、主治医等)  など


(2) 保健婦等による訪問

ケースにより複数職員で対応
対象者の精神症状、緊急性(受診)の把握
主治医がいる場合は、主治医から情報を得る
※医療中断者については、厚生省通知(昭和61年5月15日 健医発第618号「保健所における精神保健業務中の訪問指導について」)に基づく、「精神科通院医療中断者保健サービス事業」について精神科医療機関と調整を図る。
対象者が単身者の場合はできるかぎり家族関係者の有無(所在)を確認する
警察が係わっている場合は、警察からも情報を得て連携を図る
場合によっては近隣住民からも情報を得る
生活保護等福祉事務所が関係している場合は担当者から情報を得る  など

保健所等

保健所における訪問記録の記載事項

 1 取扱保健所等及び担当者氏名、2 訪問日時、
3 保健所の訪問 (1 あり 《1回、2回、3回以上》  2 なし)、
4 相談者名、 5 相談来所年月日、6 相談対象者名、
7 保健所等訪問の際、
・本人との面接の有無
・精神症状(できるだけ具体的に)
・問題行動(できるだけ具体的に)
・身体的状況(身体合併症の有無)
・受診(入院)の勧奨 (1 行った  2 行えなかった)
・受診(入院)の意思 (1 有  2 無)
8 主治医について
・主治医の有無   
・氏名及び連絡先   
・主治医の意見
・往診(1 有 2 無) 2の場合(1 可能性あり 2 困難)
主治医(指定医の有資格者)を都知事が指定する指定医として、
    診察業務を行わせることが可能か
 9 福祉事務所の関与の有無、担当者名及び関わりについての情報 
10 警察の関与の有無と状況についての情報
11 場合によって、近隣住民からの情報
12 家族による受診(1 可能性あり 2 困難)
13 支援者の応援による受診(1 可能性あり 2 困難)   など

※(2)に基づくケース検討(所レベルで)

* 地域精神保健担当、医長、課長等

本人のおかれている状況の評価
(総合)精神保健福祉センターとの協力の要否
警察との連絡調整(協力)の要否
専門的判定が必要な困難ケースの場合は、精神科医師(保健所等の嘱託医又は(総合)精神保健福祉センター)同行による、対象者の精神症状及び緊急性の把握
精神科医師(保健所等の嘱託医又は(総合)精神保健福祉センター)による受診の勧め

精神科医師

・保健所等の嘱託医
又は(総合)精神保健
福祉センターの医師
精神科医師の意見
・精神症状(できるだけ具体的に)
・問題行動(できるだけ具体的に)
・身体的状況(できるだけ具体的に)
【意 見】



(3) 保健所等内会議

※ 担当者、医長、管理職及び(総合)精神保健福祉センターで構成されるのが好ましい
明らかな精神障害があるか
精神障害によって問題行動が生じているか
早めに医療に結びつける必要があるか
社会復帰施設への結びつけの可能性
地域精神保健福祉活動でのフォローの可能性
保健所等の「精神科通院医療中断者保健サービス事業」 での対応の可能性
医療に結びつける手段は、全て講じたか
入院に結びつけることが本人の益になるか
単身者については、家族関係者の確認と連絡が取れたか(対象者についての情報と今後の関わりについて)、また、対象者が未成年者の場合、入院に対して両親の意見が一致しているか(* 地域住民に対して障害者理解のための普及啓発活動を行っているか。)


保健所等

保健所等における会議録

 ・構成メンバー及び会議の意見


☆ 法第34条の対象として対応する必要があるか

・ 医療への結び付けのための手段を全て講じたか
・ 本人の意思による入院が行われる状態にないかどうか
・ 保護者の有無(入院(医療保護入院)について、保護者の同意がえられるかどうか)



衛生局精神保健福祉課への連絡(電話、FAX)・・・・・【情報提供】

・ 本課は、状況を把握することにより、必要に応じ保健所等の活動に対するアドバイス(協力)を行う。

※保護者とは(精神保健福祉法第20条)

精神障害者の後見人又は保佐人
配偶者
親権を行う者
扶養義務者
数人の扶養義務者(配偶者、親権を行う者以外)のうちから家庭裁判所が選任した者

<以下の者は保護者とならない。>

ア 行方の知れない者
イ 当該精神障害者に対して訴訟をしている者、又はした者並びにその配偶者及び直系血族
ウ 家庭裁判所で免ぜられた法定代理人、保佐人又は補助人
エ 破産者
オ 成年被後見人又は被保佐人
カ 未成年者

☆不明な点があれば、衛生局精神保健福祉課(03-5320-4462(ダイヤルイン))に問い合わせる。




3 関 係 者 会 議



  相談(その後の関わり)の中で家庭(地域)での対応困難なケースについて、地域の関係機関等からなる関係者会議を開催する。

(参加者) 保健所等関係職員、福祉関係機関職員、(総合)精神保健福祉センター、主治医、警察、など


(1) 相談担当者から、これまでの相談内容と確認事項等について報告を行う

これまでの、保健所での相談・調査内容を資料として添付する。
添付資料は、それまでの関わり、状況が分かる内容にする
(相談を受けた日とその内容、訪問した日とその反応、受診を勧めた日とその反応など)


(2) 相談対象者に対する対応について

地域精神保健福祉活動でのフォロー
社会復帰施設への結び付け
医療への結び付け(外来・通院、任意入院、保護者等の搬送による医療保護入院)

↓* 困難ケース

◎医療への結び付け

☆ 法第34条適用の可能性について
・ 本人の意思による入院が行われる状態にないかどうか
・ 医療への結び付けのための手段を全て講じたか
・ 保護者の有無(入院(医療保護入院)について、保護者の同意が得られるかどうか)

【法第34に係る基本的考え方】
本制度は、知事の命令による移送という強制措置を伴うことから、人権に十分配慮して濫用を防止する意味からも、対象を通常の医療保護入院よりさらに重篤で緊急性の高い者」に限定する
対象者の把握に当たっては、保健所の積極的な関与が求められることから、相談訪問指導等日常の地域精神保健福祉活動の成果を活用し、迅速かつ的確に行う必要がある。



(3) 保護者に対する法第34条制度の十分な説明

(4) 法第34条制度適用に関する意思確認

(5) 保健所、(総合)精神保健福祉センター、福祉関係機関職員、主治医等により34条対応の要否を検討する
   (関係者による意見の一致が必要)

保健所等

保健所における会議録の記載事項

1 保護者への34条の説明及びその理解(1 十分 2 不十分)
2 関係者会議の構成メンバー及び関係者会議の意見

(6) 34条による移送が必要と思われる場合は、法第47条に基づく相談の一環として、保健所等長名で文書(別紙参照)により
 知事(衛生局医療福祉部精神保健福祉課)に連絡する。

 ※ 衛生局医療福祉部精神保健福祉課に、法第34条制度適応ケースの連絡があったときは、
保健所等と調整を図り事前調査を行うものとする。

 ・事前調査 : 精神保健指定医の診察が必要であるかどうかを判断(決定)するための、
衛生局医療福祉部精神保健福祉課職員による調査をいう。

これまでの保健所等での関わりの確認・状況把握
保護者に対する法第34条制度の十分な説明
保護者から、法第34条制度適用の同意書を徴する
診察のための居宅、地域等の状況確認
関係機関との連絡・調整


(注)移送制度の開始時期と終了    厚生省の見解

開始時期
指定医の診察が必要であると判断した時点(事前調査に基づき、診察の要否を決定するとき)

※「移送」と「搬送」について
「移送」⇒指定医を呼ぶ等手続きを含めた全体的概念
「搬送」⇒物理的に車両等で連れて行くこと

*移送の方が広い概念で移送の判断がないと、搬送できない。
 34条として終了する場合
保護者が同意を撤回したとき(=要件なし) 
移送の途中で患者本人が入院に同意する明らかな意思を示した場合(=要件なし)
応急入院指定病院への引き渡し(行政処分の終了)
(保護者が無く本人の了解が得られない場合(閉じこもり)また、指定医の診察までに所在が不明になった場合には、また一からやり直しになる)





4 患者への関わりについて


  移送により入院した患者について、関係機関は入院中から係わり(病院訪問による患者・病院主治医等との面会など。)、退院後の地域ケアの進め方等の検討を行い、患者が地域に暮らし続けられる方法を調整・支援する。(入院が移送制度の最終目的ではない。)

(1) 移送制度適用患者については、入院した後も、患者家族、保健所、8そうごう)精神保健福祉センター、福祉関係者、主治医等、移送に関わった関係者及び関係機関により、患者入院中や退院後の処遇について、方針を検討する。
(2) 保健所等の保健婦などは、入院した応急入院指定病院の主治医・ケースワーカー・看護婦など、病院の医療関係者と連絡を取り、病院訪問などにより、患者・医療関係者と面会して、入院中から患者退院後の地域生活支援のあり方を検討する。検討に当たっては、患者本人の意見・希望等を聞くものとする。
(3) 保健所などの保健婦などは、患者退院後の地域における医療、住居、支援者(仲間、家族、施設職員、民生委員、ボランティア、近隣住民等)、就労等の社会資源について調整を行う。)

以上のような取り組みにより、関係機関は患者の病状改善後、速やかに地域社会への復帰・参加が可能となるよう、患者や関係者を支援する。




5 診察、搬送への保健所等職員の関与


  本制度に係る診察場面及び搬送時における保健婦等の保健所職員の関与にあっては、対象者へのこれまでの関わりの経過と今後の関わりを考慮し、保健婦等がその役割と機能を十分発揮できるようケース毎に検討する。すなわち、かなり接触の取れている場合には診察場面に同席することや搬送車両に同乗又は受入病院へ同行する方がよいこともあり、それが好ましくない場合には、家族への支援や病院との連絡等で側面的関わりを行うなど、柔軟に対応する。





(参考)

【地域精神保健福祉活動の根拠法令等】

 

1.精神保健及び精神障害者福祉に関する法律
第47条(相談指導等)
   都道府県、保健所を設置する市又は特別区(以下「都道府県等」という。)は、必要に応じて、次条第1項に規定する精神保健福祉相談員その他の職員又は都道府県知事若しくは保健所を設置する市若しくは特別区の長(以下「都道府県知事等」という。)が指定した医師をして、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、精神障害者及びその家族等からの相談に応じさせ、及びこれらの者を指導させなければならない。
2  都道府県等は、必要に応じて医療を必要とする精神障害者に対し、その精神障害者の状態に応じた適切な医療施設を紹介しなければならない。
3  精神保健福祉センター及び保健所は、精神障害者の福祉に関する相談及び指導を行うに当たっては、福祉事務所(社会福祉事業法(昭和26年法律第45号)に定める福祉に関する事務所をいう。第50条の2第6項において同じ。)その他の関係行政機関との連携を図るように努めなければならない。
4  市町村(保健所を設置する市及び特別区を除く。)は、第1項及び第2項の規定により都道府県が行う精神障害者に関する事務に必要な協力をするとともに、必要に応じて、精神保健及び精神障害者の福祉に関し、精神障害者及びその家族等からの相談に応じ、及びこれらの者を指導するように努めなければならない。

第48条(精神保健福祉相談員)
都道府県等は、精神保健福祉センター及び保健所に、精神保健及び精神障害者の福祉に関する相談に応じ、並びに精神障害者及びその家族等を訪問して必要な指導を行うための職員(次項において「精神保健福祉相談員」という。)を置くことができる。

 2  精神保健福祉相談員は、精神保健福祉士その他政令で定める資格を有する者のうちから、都道府県知事等が任命する。


2. 保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領
「保健所及び市町村における精神保健福祉業務について」
(平成12年3月31日付障第251号厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知)

(保健所の役割)
保健所は、地域精神保健福祉業務(精神保健及び精神障害者福祉の業務をいう。以下同じ)の中心的な行政機関として、精神保健福祉センター、福祉事務所、児童相談所、市町村、医療機関、精神障害者社会復帰施設等の諸機関および当事者団体、事業所、教育機関等を含めた地域社会との緊密な連絡協調のもとに、入院中心のケアから地域社会でのケアに福祉の理念を加えつつ、精神障害者の早期治療の促進並びに精神障害者の社会復帰及び自立と社会経済活動への参加の促進を図るとともに、地域住民の精神的健康の保持増進を図るための諸活動を行うものとする。




(別紙)
精神保健福祉法第34条に規定する
「医療保護及び応急入院のための移送」が必要と思われるケース内容について


相 談 者 氏 名
(ふりがな)
住 所 ・ 電 話

                            電話(自宅)            (連絡先)
対象者との関係  
相 談 内 容

                         

対 象 者 氏 名 (ふりがな)
明・大・昭・平    年  月  日生


住 所 ・ 電 話                                          電話
家族構成・状況
(家族歴等)

 
生   活   歴

 

現   病   歴
(医 療 状 況)

医  療  機  関
(         )

主  治  医  名
(         )

選任審判の有無
有 ・ 無
法上の保護者
(         )

病名(診断が確定している場合):               
病状の概要

入院・通院の状況(入院期間)




身体合併の有無         有(                  )  ・ 無

往診の有無(可能性の有無)    有 ・ 無
面接・訪問時の状況

精神症状・問題行動等

                                 担当者名

関係機関の関与
(福祉・警察等)
 
保健所等ケース
検討会での方針

(家族等の意見を含め、移送が必要と判断した理由)

平成    年   月   日                                    以上のとおり報告します。

東京都知事様
       区         保健所・保健センター


                                                    保健所長等名(所属長名)              






各都道府県の移送制度の現況(医療保護入院)
《厚生労働省大臣官房障害保健福祉部精神保健福祉課》


1都1道2府43県 12指令都市


〔移送制度導入状況〕                           (平成13年1月末現在)
導     入     済 導    入   予   定
該 当 数 2 3 箇 所 3 6 箇 所
都道府県
北海道 岩手 宮城
秋田 山形 福島
石川 長野 静岡
滋賀 大阪 和歌山
島根 岡山 佐賀
熊本 沖縄  
     
札幌市 千葉市 京都市
大阪市 神戸市 北九州市
青森 茨城 栃木 東京
埼玉 群馬 千葉 神奈川
新潟 富山 福井 山梨
岐阜 愛知 三重 京都
兵庫 奈良 鳥取 広島
山口 徳島 香川 愛媛
高知 福岡 長崎 大分
宮崎 鹿児島    
       
仙台市 川崎市 横浜市 名古屋市
広島市 福岡市    



移送の実績:17道府県市              (平成12年10月現在)
  平 日 の 勤 務 時 間 帯
相談等件数 調査件数 移送件数
北 海 道 10 7 0
宮   城 0

0

0
秋   田 2 2 2
福   島 0 0 0
石   川 9 9 5
長   野 2 0 0
静   岡 9 6 0
大   阪 2 2 2
和 歌 山 40 40 17
島   根 0 0 0
岡   山 50 28 0
佐   賀 25 24 0
沖   縄 53 21 0
千 葉 市 0 0 0
大 阪 市 0 0 0
神 戸 市 96 0 0
北九州市 0 0 0
298 139 26






東京都における医療保護入院等のための移送制度実施について


(移送の取扱方針)
精神障害者の医療及び保護を行い、その社会復帰を促進し、並びにその発生の予防その他国民の精神的健康の保持及び増進に努めることによって、精神障害者の福祉の増進及び国民の精神保健の向上を図るという法の目的を踏まえ、移送の実施に当たっては、その事務が適正かつ円滑に運用されるように、特に次の点に留意する。


(1) 移送は、知事が、事前調査の上、指定医の診察が必要であると判断した時点から手続きが始まり、応急入院指定病院に入院した時点又は移送が不要と判定された時点(要件がなくなった時点を含む)で終了する。

(2)

移送は、知事の命令による指定医の診察及び応急入院指定病院に入院するための搬送を知事の責務で行うことから、人権に十分配慮し、精神科医療及び保護の適切な提供が行われるよう、慎重かつ適正な運用を図ることとする。
(3) 移送は、法第47条に基づく地域精神保健福祉活動を通して、精神科医療の受診勧奨や地域での福祉的援助を十分に行った上で対応すべきものである。したがって、保健所や精神保健福祉センター等が日常行っている相談・訪問指導等の活動成果が迅速かつ的確に移送手続きに活用されるよう関係機関は十分な連携に努めることが必要である。
また、移送により入院した精神障害者が地域社会や課程での生活を安定して送ることができるよう、地域での医療及び生活援助などの処遇方法をあらかじめ検討、調整するなど、関係機関は協力連携に努めることとする。
(4) 移送の運用に当たっては、関係機関の一に過重な負担とならないよう関係機関が協力連携し、それぞれの役割と機能を果たすものとする。
(5) 今後は、初期・二次の精神科救急医療体制の整備、地域生活を支援するための施策の拡充及び住民への啓発活動等、地域精神保健福祉活動の強化を図り、自らの意思に基づく受診を支援する仕組みを地域に構築することが重要である。




東京都医療保護入院等のための移送制度実施(案)  [概要]


この制度は二つの流れに区分される、
法第47条及び厚生省通知「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」に基づく保健所における精神保健福祉活動
都道府県知事の責任において行われる精神保健指定医による診察及び保護者の同意に基づく精神病院(応急入院指定病院)までの移送
このことから、保健所、地域保健センター、保健相談所等の地域精神保健福祉担当部署(以下「保健所等」という。)及び東京都(事業所管課)が密接な連携を前提として実施されるものである。





<法47条及び厚生省通知「保健所及び市町村における精神保健福祉業務運営要領」に
基づく保健所における精神保健福祉活動>



 ◎ 相  談

(1) 相談機関
移送は、保健所、地域保健センター、保健相談所等の地域精神保健福祉担当部署(以下「保健所等」という。)での相談を踏まえ対応するものであり、保健所等は、法第47条及び厚生省通知「保健所及び市町村における精神保健福祉活動について」に基づき(総合)精神保健福祉センター等と協力連携し、相談(訪問相談・受診勧奨を含む)助言等の支援を十分に行う。
(2)

指定医診察の対象者の把握
保健所等は、相談内容の状況から、対象者は入院が必要と思われるが、家族や主治医等による入院治療の説得をつくしてもなお、本人が入院に同意しない場合に保健所等でのケース検討や関係者会議等を開催した上で法第47条に基づく精神保健相談活動の一環として、文書で知事に連絡するものとする。
精神保健福祉課が、家族等から移送の相談を受けた場合は、対象者居住地の保健所等の協力(情報提供を含む。)を得て対象者の把握に努めるものとする。





<法第34条に基づき知事の責任において行われる業務>



1 指定医の診察に係る事前調査


(1) 保健所等からの連絡に対して、精神保健福祉課長は、いそうに係る事前調査を行う必要があると判断した場合は、速やかに精神保健福祉課職員(以下「調査職員」という。)を保健所とうに派遣する。
(2)

事前調査の実施
調査職員は、保健所等の職員の協力を得て精神保健指定医(以下「指定医」という。)の診察の必要を判断する場合の調査を行う。
調査に当たっては、状況の把握に努めるとともに、保護者もしくは扶養義務者(以下「保護者等」という。)並びに主治医と連絡を取り、これまでの治療状況等の把握に努めるものとする。

(3)

保護者等への説明と同意
医療保護入院のための診察が必要と判断される場合、調査職員は保護者とうに対し移送の必要性や制度内容皿にはほごしゃの義務等について十分な説明を行い、保護者等から「移送同意書」を微する。

(4) 指定医の診察の必要な対象者
指定医の診察を必要とする対象者は、精神障害者であり、保健所等が(総合)精神保健福祉センター等と協力・連帯した地域保健福祉活動(訪問等により直接本人と接触が図られていることを要す。)で努力したにもかかわらず有効な解決が得られず、かつ切迫した状態にあると判断され、入院治療が必要と考えられる者である。

切迫した状態とは、次期のような状態を指す。
栄養、睡眠、清潔の保持、寒冷・暑熱の防御、火気の管理等の基本的な生活の維持にも困難が生じている。
 社会生活上必要な状況認知や判断に著しい障害があり、周囲の状況に対し適切な行動がとれない状態、即ち興奮や過活動、持続する重度社会的引きこもり等が反復、持続または増悪しているような状態(措置診察の対象とならない状態(辞書自傷他害の恐れがない))であること。
そのため入院治療が直ちに必要であるにもかかわらず、本人が入院を強く拒んでいる。

2 移送の実施

(1) 移送の開始時期
1の事前調査結果に基づき、医療福祉部長が指定医の診察が必要であると判断(決定)した時点から移送(指定医の診察等を含む一連の手続きをいう。)の手続きが始まるものとする。

(2)

移送運用時間帯
平日の日中(午前9時から午後5時まで)を原則とする。

3 移送手続きの終了


移送の手続きは、次の場合又は時点のいずれかに該当したときに終了することとする。
(1) 移送手続中において、移送の対象者の所在が不明となった場合
(2) 移送の対象者に保護者等がいない場合で、居宅で診察することにつき、本人の了解が得られない場合
(3) 居宅での診察に保護者の協力が得られず、診察ができない場合
(4) 医療保護入院等のための移送・入院が不要と判定された時点
(5) 移送手続きの途中で患者本人が入院に同意した時点
(6) 保護者が同意を撤回した時点
(7) 移送先の応急入院指定病院に入院した時点

5 その他

(1)

本制度を実施するに当たっては、本事業を規定する法第34条のほか、法第33条や法第47条等関係条項(規定)に基づき、人権に配慮した適正な医療の確保及び保護に努める。

(2)

本制度に係る診察場面及び搬送時における保健婦等の保健所等職員の関与にあっては、対象者へのこれまでの関わりの経過と今後の関わりを考慮し、保健婦等がその役割と機能を十分発揮できるようケース毎に検討する。
すなわち、かなり接触の取れている場合んいは診察場面に同席することや搬送車両に同乗又は受入病院へ同行する方がよいこともあり、それが好ましくない場合には、家族への支援や病院との連絡等で側面的関わりを行うなど、柔軟に対応する。





医療保護入院等のための移送(フロー図)




医療保護入院等のための移送(フロー図)

注)以外の部分が、34条対応の流れ

☆保健所及び精神保健福祉センターでの本来事業としての関わり
【法46条、47条及び厚生省大臣官房障害保健福祉部長通知
「保健所及び市町村における精神保健福祉業務について」(H12.3.31)に基づく業務】



東京精神保健福祉士協会  事務局
〒169-0072 東京都新宿区大久保1-1-2 富士一ビル4F 日本障害者センター内
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